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月光ゲームの舞台を推理!

アリスら英都大学ミステリー研究会(EMC)のメンバーが、噴火により隔絶されたキャンプ場にて出会った 14 人の男女と共に連続殺人事件に巻き込まれる…という有栖川有栖の青春ミステリー「月光ゲーム」。

今回は、月光ゲームの舞台について考察していきます(・ω・)ノ

月光ゲームの舞台は、架空の山である「矢吹山」の中腹にあるキャンプ場。

架空の山とはいえ、そこに至るルートも記されており、かなり具体的な場所・山を想定して描かれたと思われます。

そこで今回は、アリスたちの足跡を追いながら「矢吹山」の場所を考察していこうと思います。

ミステリー好きの皆様は、小説片手にミステリーの舞台を追体験する旅行に出かけるのも楽しいのではないでしょうか(´-`*)?

1.出発点:英都大学(京都)

引用: http://kyoto-tabiya.com/blog_rakuchu/%E5%90%8C%E5%BF%97%E7%A4%BE%E5%A4%A7%E5%AD%A6%E3%81%AE%E9%A2%A8%E6%99%AF/ より

アリスたち推理小説研究会(EMC)の母校となっているのが英都大学です。この英都大学は実際には存在しない架空の大学です。

しかし、そのモデルとなった大学は必ず存在するはず!…ということで、まずは旅の出発点となる英都大学の考察です。

作中にて、英都大学は京都にあることが明記されています。しかし、さらにモデルとなった大学を絞っていくためには、作中の記述を総合的に判断・推理していくほかないでしょう。

英都大学のモデルを考察するうえで参考になるのが、著者のプロフィールです。人間、何かを創作するとき、まず参考にするのは自分の経験です。小説に出てくる舞台にしても然り。

さらに言うと、本作品は著者名と主人公名が同じ「有栖川有栖」なんですよね。これはひとつの自己投影ですから、自身の母校を英都大学のモデルにしている可能性は大いにあると考えます。

ということで、まずは作家・有栖川有栖さんのプロフィールを確認してみましょう。

有栖川有栖さんは…「同志社大学・法学部・法律学科」の出身のようです。

一方、作中に出てくるアリスこと有栖川有栖くんは…「英都大学・法学部・法律学科」です(参考:月光ゲーム, 22 ページ)。

ほら、「法学部・法律学科」で重なっている!

やはり、自分の分身であるアリスと著者である有栖川有栖氏はプロフィールを共有している可能性が高いと推測されます。

アリスと有栖川有栖氏(著者)は学歴のうち学部と学科を共有していることがわかりました。では、より核心となる大学はどうでしょうか?

作者と同じ大学であるならば、作中アリスの母校も同志社大学であるはず…。

登録の後、僕はその人、江神二郎さんにキャンパスから烏丸通りを隔てた学生会館のラウンジに案内された。

月光ゲーム, 25 ページより

この記述から、英都大学は烏丸通りに面した大学であることが推測されます。

烏丸通り沿いに存在する大学は3つ

① 同志社大学

② 大谷大学

③ 平安女学院大学

…です。

そして、そのなかで法学部があるのは、同志社大学だけ

…はい、もうほぼ確定ですね。作家・有栖川有栖氏の母校でもある同志社大学が作中・アリスくんの母校でもある可能性が非常に高いことが示唆されました。

本ブログでは、アリスら EMC の母校となっている英都大学のモデルは「同志社大学」であると断定したうえで話をすすめていきます。

2.空白の経路:JR小海線までの道のり

「月光ゲーム」の冒頭では、アリスら EMC の面々が電車に乗るシーンが描かれています。みんなで楽しく矢吹山へと向かうシーンですね。

その電車は、JR 小海線 であることが作中に明記されています。

JR 小海線は、小淵沢駅(山梨県)から小諸駅(長野県)を結ぶ、全長 78.9 km の高原鉄道です。海がないのに小海線とは、ちょっと面白いですね(´-`*)

引用:Google Map より

さて問題は、英都大学のある京都から JR 小海線の玄関となる小淵沢駅までのルートが作中に明記されていないことです。

この京都から小淵沢駅までのルートについて、「月光ゲーム」刊行当時と現在ではルートも大きく様変わりしていると思いますが、自分なりに「現在、自分たちが行くなら」という視点でルートを考察してみました。

答えのない考察ですが、皆様の参考になったら幸いです(*´ω`*)

案①: JR ルート

新幹線と電車を乗り継ぐルートなら、

京都駅

↓ 新幹線のぞみ(約 30 分)

名古屋駅

↓ JR 中央本線(約 1 時間 30 分)

中津川駅

↓ JR 中央本線(約 2 時間)

塩尻駅

↓ JR 中央本線(約 1 時間)

小淵沢駅

…うーん、電車だけだとかなり面倒くさい旅程となりますね…(;・∀・)

乗換が多いし、そもそも始発で出発しても小淵沢駅に到着するのは 12時30分 になってしまいます。

作中では、小諸駅に 11時頃 に到着したと書いてあるので、JR ルートならばどこかで一泊したことになります。貧乏学生のアリスたちが一泊宿をとるとは考えにくいので、ちょっと可能性は低いですかね (;・∀・)

そうなると候補に挙がってくるのは 夜行バス でしょう。

案②: 夜行バスルート

調べてみると、京都駅と山梨県の甲府駅の間を運航している夜行バスが複数あります。

しかし、一部の夜行バスは甲府駅に朝 4 時着となっており、そんな早朝に放り出されても…って感じです。

到着時間に注目して検索したところ、以下のようなプランがみつかりました。

京都駅(23時 出発)

↓ クリスタルライナー

甲府駅(翌 7 時 到着)

↓ JR 中央本線

小淵沢駅(8時 到着)

うん、丁度よい感じですね(*´ω`*)

EMC の面々は貧乏学生ですし、少しでも節約するために夜行バスをつかった可能性は高いでしょう。

時間的にも丁度良いと思いますので、当サイトでは EMC は「② 夜行バスルート」をつかって小淵沢駅まで移動したものと推測します。

3.JR 小海線で小諸駅へ

引用: https://www.city.hokuto.yamanashi.jp/photos/24kei/16-koumi/h16bkc0006.html より

EMC の一行は、JR 小海線の電車に乗り、「ミステリー題名しりとり」をしながら小諸駅を目指します。

車窓には、日本で最も高い鉄道地点(=ハイエスト・ポイント)も。

引用: http://koumi-line.jp/tourism/343/ より

このようなところを通過できるのは、高原鉄道ならではの楽しみですね(´-`*)

引用:PhotoAC より

日本で最も高い場所にたつ鉄道駅「野辺山駅」で乗客が降りた後も、EMC 一行は電車に乗り続けます。

そして作中で 11時前、EMC の一行は終点の小諸駅(長野県)へと到着しました。

引用: http://www.retro-station.jp/04_koshinhoku/komoro.html より

うーん、ローカルな雰囲気ただよう良い駅舎ですねー(´-`*)

4.小諸の町で小休憩

小諸市の公式ページから、小諸市の街並み
引用: https://www.city.komoro.lg.jp/citypromotion/photo/index.html より

EMC 一行は、矢吹山へと向かうバスが来るまで、小諸の町で時間をつぶすことにしました。

アリスは、懐古園に行ってみませんか…と提案しますが、残念ながらその提案は却下の憂き目に…(;・∀・)

ちなみに懐古園ってこんなとこ ↓

引用: https://www.komoro-tour.jp/castle/ より

作中でのアリスの蘊蓄によると、懐古園は『影の告発(土屋隆夫 著)』の舞台になっているのだそう。興味のある人はぜひ!

さて、はなしを戻して、懐古園の観光をあきらめた EMC 一行。結局、彼らは駅前の喫茶店「ソレイユ」で休憩することにしました。

ここで気になるのは、「ソレイユ」が実際に存在するかどうか…ですよね?

もちろん調べてみましたよ(・ω・)ノ!

現在、小諸駅の駅前にある喫茶店は3つ。

① ティーサロン寿徳

② 停車場ガーデン

③ マモー

このどれかが「ソレイユ」のモデルとなっているのでしょうか?

作中に書かれた「ソレイユ」の手掛かりは、

☑ 入り口がアクリルドアであり、押すタイプの扉であること

☑ 細長い廊下のような奥行きのある店であること

店舗の外観で比べてみると…

① ティーサロン寿徳

引用: https://kugesanpo.exblog.jp/23771751/ より

② 駐車場ガーデン

引用: https://yo-shibata.at.webry.info/upload/detail/030/767/95/N000/000/005/154113478387586595180_20181029_5609.JPG.html より

③ マモー

引用: http://showaspotmegri.cocolog-nifty.com/blog/2014/10/post-8009.html より

…うん、押すタイプのアクリルドアの喫茶店はなさそうですね…(;・∀・)

駐車場ガーデンは、扉の様子はよくわかりませんが、非常に広い喫茶店で、どうみても「廊下のような」と形容されるようなお店ではないので却下でしょう。

調査の結果、作中の記述と 100% 一致する喫茶店は、現在、存在しないことがわかりました。

これは僕の独断ですが、作中の雰囲気にもっとも近いのは「マモー」だと思われます。

「ソレイユ」は残念ながら存在しないようですが、EMC 一行のことを想いながら、マモーで優雅なひとときを過ごすのも一興ではないでしょうか (*´ω`*)

5.いざ矢吹山へ

さあ、推理の旅もいよいよクライマックス。EMC 一行は、小諸駅前からバスで目的地である矢吹山へと向かいます。

そもそも、矢吹山はどの山をモチーフにしているのでしょうか?

まずは、作中の主な情報をまとめてみましょう(・ω・)ノ

これから向かう矢吹山は長野県と群馬県の境近くにあり、浅間山系に属する標高二千四百メートルの山で、キャンプ場ガイドを見てもテントのマークがついていない。

月光ゲーム, 33 ページより

「平気だよ。ちゃんと麓までバスも通ってんだから。まぁ、そのバスは麓の温泉に行く人を運んでんだろうけど」

月光ゲーム, 33 ページより

僕たちは荷物を担いで乗り込んだ。これから一時間このバスに揺られることになる。

月光ゲーム, 34 ページより

場所を考察するうえでキイとなる情報は、「矢吹山の麓まで、バスで1時間」ですね。

下の図は、小諸駅前に乗り入れているバスの路線図です。

出典: https://busmap.info/busstop/123085/ より

この路線図をみると一目瞭然で、浅間山系まで運航している路線は2つだけでした。

① 高峰山ルート(図中の右) 所要時間:1時間

② 湯ノ丸山ルート(図中の左) 所要時間:1時間

うん、どちらも バッチリ1時間 ですね。このどちらかのルートにある山が矢吹山である可能性が高いと思われます。

① 高峰山ルートから登れる山としては、

・高峰山(2,106 m)

・三方ヶ峰(2,040 m)

・籠ノ登山(2,228 m)

・黒斑山(2,404 m)

・剣ヶ峰(2,281 m)

② 湯ノ丸山ルートから登れる山としては、

・湯ノ丸山(2,101 m)

…の 6 山があります。

このうち湯ノ丸山は、矢吹山が属する浅間山系ではなく 烏帽子火山群 に属する山ですので、矢吹山の候補からは外れてしまいます。

よって、矢吹山は 高峰山ルート から登れる山に絞られました。

そのなかで最も矢吹山の条件に近いのは黒斑山です。

作中において、矢吹山の標高は 2,400 m と明記されており、黒斑山はこの条件にバッチリはまります。

さらに、作中には山頂を目指すアリスの視点で、以下のような記述があります。

十一時半ちょうど。山頂征服。

東に浅間山の山容が望めた。雄大そのものの眺め。

月光ゲーム, 56 ページより

この描写から考察すると、山頂から浅間山がしっかりと一望できることも矢吹山の条件にいれることができそうです。

そうなると候補から外れるのが、高峰山、三方ヶ峰、籠ノ登山の3山です。

この3山は標高が黒斑山よりも低く、山頂から浅間山をみたときに黒斑山が視界に入ってしまうためです。

また、剣ヶ峰も候補から外れそうです。剣ヶ峰山頂から見て、浅間山は東というより北~北東の方角であるためです。

一方、黒斑山はこの写真の通り、山頂から浅間山をしっかりと見渡すことができます。

引用: http://www.gtr.co.jp/hobby-site/mount/gunma/mg-09.htm より

以上の検討から、当サイトでは 黒斑山が矢吹山のモデル となった可能性が高いと推測します。

ただし、作中でのいくつかの記述は黒斑山の状況とマッチしていません。

例えば、

噴火口は足元に虚ろな口を開いていた。直径にして二百メートルはあろうかという巨大なすり鉢だ。はるか下方のその底は荒い砂地で、煮えたぎるマグマなどはもちろんどこにも見られはしない。が、周囲の黒い岩場は明らかに溶岩質のもので、髭のように生えた雑草が風に揺れていた。遺跡に佇んでいるようで、みんなしばらく黙って眼下の穴を見降ろしていた。

月光ゲーム, 56 ページより

という噴火口の記述です。

黒斑山の山頂には噴火口はありません。下の図のように、山頂部は切り立った崖になっています。

写真奥の中央、一番高くなっているのが黒斑山の山頂です
引用:http://www.shinshu-tabi.com/kurofuyama.html より

調べてみましたが、浅間山系で噴火口をもつ山は浅間山のみです。

引用: http://asamayama2568.jp/?mode=image&filename=asamaMAP1.jpg より

「じゃあ結局、矢吹山のモデルは浅間山なの?」っていうと、そうではありません。

だって、アリスたちは矢吹山の山頂から浅間山を見ているわけですから、二つは別々の山であるはずです。

浅間山系には火口をもつ山がないことを踏まえると、矢吹山の「噴火口あり&活火山」というのは小説のための 架空の設定 と考えるのが妥当でしょう。

そしてその他の条件を総合的に判断すると、矢吹山のモデルとなった最有力候補は 黒斑山 であると結論付けることができるでしょう。

6.まとめ

これまで「月光ゲーム」の舞台について、当サイト独自に分析してきました。

以下が、当サイトの提案する「月光ゲーム追体験ツアー」の旅程です。

1.同志社大学から京都駅へ(時間は自由に)

2.京都駅から高速バス「クリスタルライナー」に乗車(23時)

3.甲府駅に到着(翌7時)。その後、JR 中央本線の電車に乗車。

4.小淵沢駅に到着(8時)。その後、JR 小海線の電車に乗車。

5.小諸駅に到着(11時)。マモーでランチ休憩し、「アサマ2000スキー場行き」に乗車

6.高峰高原H前で降車。黒斑山に登山

残念ながら、黒斑山山中に適当なキャンプ場はみつかりませんでしたが、そもそも作中でも「キャンプガイドにも載っていない隠れ家的キャンプ場」的なことが書いてあったので、しかたない(?)ですね (;・∀・)

もし追体験ツアーを実施される場合は、黒斑山にテントを張れるような場所があるか確認してみるのも楽しそうですね!

では、また別の記事でお会いしましょう!

よい旅を(・ω・)ノ!!

Book Travels

「冷静と情熱のあいだ」の舞台に行きたい!(国内編)

小説の舞台となった場所をご紹介する「Book Travels」のコーナー。

今回は、辻仁成さんの『冷静と情熱のあいだ(Blu)』の舞台について、日本国内で登場したスポットを簡単な概要とともにご紹介していきます (*´ω`*)

東京

物語の中盤~終盤、順正は自己をみつめなおすため、一度日本に帰国します。

日本で順正の生活の拠点となるのが、東京・世田谷にある梅が丘のアパートです。

順正が暮らす梅が丘のアパートは羽根木公園のすぐそばにあり、部屋の窓からは羽根木公園の小高い丘が見えています。

日本で定職についていない順正は、部屋から見える羽根木公園の姿をながめることで、季節の移り変わりを実感していたのでした。

1. 羽根木公園

(出典:http://www.city.setagaya.lg.jp/shisetsu/1217/1271/d00004240.html)

羽根木公園には650 本以上の梅の木が植えられており、東京都内でも有数の梅の名所として知られています。

順正もまた部屋の窓から見える羽根木公園の梅を好ましく思っていたようで、順正が再び日本を離れるとき、彼が心の中で別れを告げたのはいつも生活の傍らにあった羽根木公園の梅の木でした。

2. 成城大学

(出典:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%83%AB:Seijouniv2012055.jpg )

成城大学は順正の母校です。

作中で、梅が丘に帰ってきた順正は、仕事をせず思索にふけって毎日を過ごしていました。そんな日々の中で、順正は何度か母校である成城大学まで足を延ばしています。

そこでまた、同級生だったあおいの記憶にひきよせられることになるのですが…。

成城大学は、冷静と情熱のあいだ(Blu)の作者である辻仁成さんの母校でもあります。

キャンパス内の詳しい描写も納得ですね。作中にでてきた場所を探して散歩するのも一興かもしれません(*´ω`*)

以上2か所のスポット紹介でした。

冷静と情熱のあいだに出てくる国内スポットは少ないですが、いずれも東京にありアクセスが良いですから、東京観光ついでにふらっと足をのばすのが良いかもしれません♪

あなたも順正の気持ちを想像しながら、ゆっくり散歩してみては?

ではまた!

Book Travel (海外編)

「冷静と情熱のあいだ」の舞台に行きたい!(イタリア編)

小説の舞台となった場所をご紹介する「Book Travels」のコーナー。

今回は、辻仁成さんの『冷静と情熱のあいだ(Blu)』の舞台について、簡単な概要とともにご紹介していきます (*´ω`*)

今回ご紹介する 8 箇所は観光地として有名な場所も多く、実際に足を運んでみるのも楽しいと思いますよ。

もしよろしければ、旅行計画の参考にしてくださいませ (・ω・)ノ

イタリア・フィレンツェ

『冷静と情熱のあいだ(Blu)』では、物語の主な舞台としてイタリアのフィレンツェ、ミラノが大変魅力的に描かれています。

まずは、主人公である阿形順正が暮らす街、フィレンツェからみていくことにします (*´∀`)

1.フィレンツェのドゥオモ(サンタ・マリア・デル・フィオーレ大聖堂)

何と言っても、物語のメインテーマになっている「フィレンツェのドゥオモ」これは外すことができませんね!

ドゥオモとは、イタリア語で街を代表する大聖堂のこと。なのでフィレンツェだけでなく、ミラノなどにもドゥオモと呼ばれる大聖堂は存在しています。その町ごとのランドマークとなっている教会というわけですね。フィレンツェのドゥオモは、写真のとおり、街中にどんと大きくそびえ立っています。ここのクーポラから見渡すフィレンツェの街並みは素晴らしいと評判です。

では、フィレンツェのドゥオモは、物語のなかでどのように登場するのでしょうか?

フィレンツェで生活している順正は、かつての恋人であるあおいのことが忘れられずにいました。いまの恋人である芽実と身体を重ねながらもあおいのことを度々思い出す順正。その心には、あおいと交わした「あおいの30歳の誕生日に、ドゥオモのクーポラで逢おう」という約束が残っていたのです…。

そう、この約束の場所こそが、フィレンツェのドゥオモなのです。

刻一刻と近づいてくる約束の日。あおいに逢いたいという気持ちは大きくなっていきますが、順正はいまだドゥオモに行くべきか決意できずにいました。約束の日、あおいがドゥオモに来てくれる保証なんて何一つありません。もし、ドゥオモにあおいが来なかったら…。そのときは、記憶のなかのあおいとも決別しなくてはなりません。

順正はドゥオモに登る決意を固めるのか?あおいはやってくるのか?

ちなみに、クーポラとは写真の中央右、丸い屋根をもつドーム部分のことを指すようです。作中の「ドゥオモのクーポラで会おう」という約束は、ドームの上のほうに王冠のようにのっている展望台を意図しているよう。

そんなふたりの心情を考えながら、ドゥオモのクーポラに登ってフィレンツェの街並みを見渡すのも一興ですね!

2.ヴェッキオ橋&アルノ川

ヴェッキオ橋は、フィレンツェを流れるアルノ川にかかる歴史的な橋です。イタリア語で「古い橋」という名前が示すとおり、現在、フィレンツェ最古の橋として、みんなに親しまれています。写真の中央、建物が乗っている妙ちくりんな橋がヴェッキオ橋です。ちなみに、橋の中央にあるテラスからの眺望はバツグンで、いつも多くの観光客で賑わっているようですよ。

アルト川は、フィレンツェの街中を東西に流れる河川で、特別水が綺麗であったりといったことはありませんが、市民の生活に根付いた河川で昔から愛されています。夕日との相性は素晴らしいと評判で、夕暮れの川面に向けて多くの観光客がシャッターをきっています。

ヴェッキオ橋は順正の暮らすアパートから歩いて 5 分ほどの場所にあり、また、ヴェッキオ橋のそばには順正の働いている工房があります。つまり、順正のフィレンツェでの生活において常にそばにある存在、それがヴェッキオ橋とアルト川なのですね。

3.グイッチャルディーニ通り

グイッチャルディーニ通りは、ヴェッキオ橋からピッティ宮殿をむすぶ通りの名前です。上の写真の白い矢印に沿って大通りがみえますよね。これです。

グイッチャルディーニ通りの名前は、12世紀頃フィレンツェに進出してきたグイッチャルディーニ一族に由来します。この一族は裕福な商人であり、政界にも進出できるほど力をもった一族だったようです。

小説版の 47 ページにはこう書いてあります。

工房の前を登るグイッチャルディーニ通りを五十メートルほど辿ると、パラッツォ・ピッティの重々しい立面が姿を現す。

—冷静と情熱のあいだ (Blu), 47 ページ より

パラッツォ・ピッティ(=ピッティ宮殿)には順正のお気に入りの絵画「大公の聖母子」が展示されています。きっと順正は、その絵画をみるため、日々グイッチャルディーニ通りを歩き、ピッティ宮殿へと来ていたのでしょう。現在のグイッチャルディーニ通りはお土産物屋さんが軒をつらねる観光通りとなっていますが、順正の日常を想像しながらゆっくり散策するのも一興ではないでしょうか。

4.パラッツォ・ピッティ(=ピッティ宮殿)

ピッティ宮殿は、15世紀、銀行家ルカ・ピッティによって建築がはじめられました。このルカ・ピッティは、フィレンツェで権勢をふるったメディチ一族をライバル視しており、「メディチ宮よりも優れた建物を」という一心で投資していたようです。しかし、ルカ・ピッティは、ピッティ宮殿の完成をみることなく死去してしまい、ピッティ宮殿の建築は中断されました。その建築を再開・完成させたのは、皮肉にもメディチ家の当主コジモ1世でした。

現在ではメディチ家が収集した多数の美術品を公開しており、美術館・博物館として市民に親しまれています。

順正は、昼休憩の時間を利用して、よくピッティ宮殿へ大好きなラファエッロの絵画を見に来ていたそうです(小説版 47 ページ)。日々通っていたからこそ、順正は美術品の監視員が代替わりしていることに気づきます。過ぎ去りし時間と人の移り変わり、そしてその中で変わらない美術品の輝きに気づき、その輝きを守る修復士という職業にあらためて自信をもったのでした。

5.サンタ・マリア・ノヴェッラ教会

物語終盤、恩師の訃報を知り、順正は再びフィレンツェへと帰ってきます。

そして、あおいとの約束の日が近づく中、フィレンツェに戻った順正は自身の心と向き合うようになっていきます。

サンタ・マリア・ノヴェッラ教会は 、そんな物語の最終盤にでてくる建物です。

サンタ・マリア・ノヴェッラ教会はサンタ・マリア・ノヴェッラ駅のすぐそばに位置しており、物語の終盤も終盤、再会した順正とあおいはサンタ・マリア・ノヴェッラ教会の高貴な尖塔を視界に映しながら、ゆっくりと駅まで歩いて行きます。

作中で、順正が最後に決断を迫られる場所、それがサンタ・マリア・ノヴェッラ駅です。

それがどんな決断なのか、それはご自分の眼で確かめていただけたら、と思います(´-`*)

イタリア・ミラノ

物語が中盤に入ると、順正はミラノへと旅立つことになります。彼女である芽実の父親に会いに行く旅です。しかし、肝心の芽実が父親に会いたがりません。そこで仕方なく、順正たちはミラノを観光することにしました。

ということで、次は、ミラノ旅行で登場したロケーションについてご紹介していきます(*´∀`)

6.ミラノ中央駅

ミラノ中央駅は、ミラノの鉄道の玄関口であり、イタリアで2番目に利用者の多い駅だそうです(利用者トップは、ローマのテルミニ駅)。順正と芽衣のミラノの旅も、当然、ミラノ中央駅から始まります。

小説版 81 ページにはこのように書かれています。

ぼくたちを乗せたユーロスター(国際特急)は予定通り夕方の四時にミラノ中央駅に到着した。秋の深まる北イタリアの大都市は低い雲が濃厚に空を覆い隠し薄暗かった。


(中略)


人々もポケットに手を入れたまま足早に駅構内へと逃げ込んでくる。ミラノの人々の表情には、どこか東京の人間に似た険しさがあった。

—冷静と情熱のあいだ (Blu)  より

フィレンツェの穏やかな空気に慣れ親しんだ順正には、ミラノの雰囲気が暗く冷たい印象として感じられたようです。ぼくもミラノを旅行したことがありますが、たしかにミラノは大都会独特の雰囲気があって東京に似た雰囲気といえるのかもしれません。

けど、スタイリッシュな雰囲気が好きな方にはオススメの街ですよ!

7.ポルディ・ペッツォーリ美術館

ポルディ・ペッツォーリ美術館は、ミラノの貴族であり美術品コレクターだったポルディ・ペッツォーリ氏のコレクションを展示する美術館です。美術館となっている建物はポルディ・ペッツォーリ氏の私邸ですので、その調度品などから当時の貴族の暮らしぶりを感じることができるのも面白いですよね。

作中、芽実はこの美術館で父親に会う決意を固めます。そんな、話の重要な転換点となっている美術館です。

8.ミラノのドゥオモ広場

ミラノにもフィレンツェに負けないくらい有名なドゥオモがあります。

そのドゥオモの前に広がるのが、ドゥオモ広場です(←そのまんま)(´-`*)

ちなみに有名なミラノのドゥオモはこちら(僕がイタリア旅行いったときの写真なので日付が入ってます…。ごめんね…。)

ミラノ旅行の終盤、順正はかつて愛した女性、あおいによく似た人影をドゥオモ広場で見かけます。

これだけ人通りの多い異国の広場で、意中の人の姿を見つけたら「運命」を感じずにはいられないというもの。

そんな物語が大きく動き出す小説中盤の重要なスポットです。

あなたも、ドゥオモ広場で自身の「運命の人」を探してはいかがでしょうか(*´ω`*)?

以上、長々とご紹介しましたが、「冷静と情熱のあいだ」の舞台を旅する10選いかがでしたでしょうか?

お財布に余裕があれば、色々まわってみたくなる魅力的な場所ばかりでしたね(´-`*)

ではまた!